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2015/03/29
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ありがとうね
昔、往診(訪問診療、訪問歯科という言葉があまり普及していなかった時代です、
ということはかなり昔であることは察して下さい)に出かけた時のことです。
あるご病気で、先が長くないという方がおられました。いわゆる余命○○ヶ月という方です。
その方が入れ歯を作ってほしいということで製作することにしました。
(当時は勤務先の院長の指示もありましたが)義歯製作は時間が結構かかるので、
なるべくと思い、できる技工は自分でやったりもしたのですが、
徐々に弱っていかれる中で作っていくのは正直辛いものがありました。
何度かの行程を経て義歯ができた時、
「ありがとうね」
と最後に言われました。
結局これが本当に最期となりました。
一週間経たずにお亡くなりになられた と電話がありました。
そして、ご家族の方に
最期までありがとうございました、
という言葉を頂きました。
義歯自体はほとんど意味ももたたなかったのかもしれませんが、
この臨終の間際に少しでも寄り添うことができたのかと思っています。
そしてこの体験に関われたことは本当によかったです。
臨終の間際でこそ、歯科で関われることがある、と信じています。